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ケラスィラ


  私は思い人、討ち果たすことが出来た。
 私は狩人、君を捉えたら離さない。
心が震え、飛び出しそうだ。この想いを感じて欲しい。
 貴方は深海みたい、私と話をしてほしい。

私は、エルフと人の子、子供の頃から苛められて来た。
けれども貴方は転んでいた私の手をとってくれた。
 私は生きる。アテなどないけれど、それでも貴方と同じ物を見て生きたい。

 ねぇ、貴方はどう思う?私と一緒に見て欲しい。



 「ん…」
目が覚めた。またあの夢。
時々、夢で詩を読み上げるだけの夢を見る。その時によって色々と違うけど、さっきのは割と昔から見る夢。
 「ん~…どれくらい寝てたかしら」
私は背伸びをする。グギグギと変な音が体に響く。
目の前には作業机、上には本やら辞書やら書類がいっぱいある。
 「新型ゴーレムの設計工程…ま、半分ってとこね」
書類の紙には、今仲間で作っている新型ゴーレムの基礎設計がある。
基礎になるフレーム軸を魔法素材と融合させた鉄で強度を保ちつつ、かつ作りやすさを重視して特殊粘土で…。

 「よう、ケラスィラ、ただいま~」
思考の海に記憶を探していた時、ふいに出入り口の扉が開く。
 扉を開けたのは、私の良く知っている人物だった。
 「え、マイオス?なんで…貴方遺跡に行ってたんじゃ?」
私は彼の名前を口にする。
 「今日帰ってくるって予定だが?」
 「え、本当?」
そうだったっけ?あぁもう、何してるのよ…私ったら…。
 「あ…ごめん。…私予定表とか見てなかった…」
 「ま、別にいいんじゃないの?」
そう言うと、彼は私の机の前まで来た。

 彼の名は、マイオス。私の…、うん、私の男の友達。高等学術所で知り合った私の友達。
 彼は考古史が好きで、魔法史が好きだった私と良く同じ班になっていた。
考古史は専門する人が少なくて、魔法史と合同と見なす場合が多く、私の通っていた学術所でもそうだった。だから私は彼と出会えた。


 「あ、これ中身なに?飲んでいい?」
私の机の上にあるティーポットを見るとひょいと持ち上げて尋ねる。
 「あ…それお茶。飲んでいいよ」
 「ありがと」
そういうと彼は同じく机の上にあるコップを持って…あ。
 「それ…」
 「ん、あっ」
ごくごくとお茶を飲み込んでいたが、ある事に気付いた彼の表情にヤバイという事が読み取れる。
 「私のコップ…」
 「すまんっ」
だってここまで何も飲まずに来たんだもんと言葉を繋げる。
そんな言葉に、私はため息が出る。

 彼はいつもそう。どこか抜けている。
でも、彼のお陰で今、私が好きな魔法史についての研究ができている。
 幼年学問所を7年通い、高等学術所で5年間勉強続け、さてどこへ勤めようかと悩んでいた時、彼がこの帝立魔法アカデミーを紹介してくれたのだ。
 なんでも、彼の父の友人の紹介で、ちょうど魔法史分野の定員が割れていたので、なんなら来ないか?と言われたからだ。
 最初、私は否定的だった。彼が私の為に紹介してくれたのは涙が出る位嬉しかった。でも、だからこそ不安だったし、申し訳ないと思った。
 人間の血が混ざったクォーターエルフの私に、果たして勤める事ができるのだろうかと思っていたからだ。

 …その思いは一瞬で砕けた。
 アカデミーの雰囲気は表面上、決して明るい訳ではない。ただ、そこには種族の隔たりが存在していなかった。獣人種や人との混血のエルフなども所属していて、アカデミー内は穏やかな空気があった。

「あー…ケラスィア…調子どう?ため息してたけど」
しばらくの沈黙の後、彼は口を開く。
「調子って…何の?」
「えっ、んと、研究の調子とか」
しばらく考えていたが、彼はそう言って来た。
「やっぱりベルゼーフ教授がいないとまとまりに欠けている。でも、なんとかあの新型ゴーレムは順調に進んでいるわ」
私はそんな彼の問いに、どこか残念そうに答える。
 「へー、全然進んでないかと思ったら、それだけは進んでるみたいなんだな」
彼は意外そうな声で言う。
 「ベルゼーフ教授か…あの人、軍に協力するだので軍の研究所へ行っちまったんだもんな…。言ってる事とやる事がちがうような…」

彼は思い出したように言う。

 ベルゼーフ教授は、この帝立魔法アカデミーの長をしている人物で、我がアルトディア帝国を代表するまでの名高い学術士である。
専門分野は生物学。主にエルフの起源や文明が起こるまでの歴史等を研究している。
『探求する者ならば扉は開かれる』をモットーするこのアカデミーの長である彼の思想は、まさにアカデミーの掲げる概念の『鏡』といえる程に分かりやすい物であった。
今、我がアルトディア帝国は、魔法統治におけるエルフの優秀さを謡い、魔法適用の低い人間種の迫害政策を取る『エルフ至上主義国』である。そして人々はそのエルフ至上主義を認め、かつ支持をしている。
だが、それでも我がアルトディアには人間種も住んでいたのだが、皆迫害されている。
 
 だが、ベルゼーフ教授は、生物学の視点からエルフ至上主義の疑問点や問題点を上げて批判的な態度で臨んでいる。それ故にアカデミーも帝国の掲げる主義に疑問を持ち、多種族に友好的であった。

ベルゼーフ教授は、帝国の人間迫害政策に真っ向から反対する論を纏めた本を出版しているが、物がモノなので数冊製作するだけで、しかもアカデミー内だけで持ち出し厳禁と来ている。教授自身が言っていたが、論に殉ずるよりも、論に逆らって論を説くと言っていた。
 彼が言っている言ってる事とやる事が違うとはそこの点であった。


 「さっきから思っていたが、新型ゴーレムの設計やってるのか?ケラスィアって魔法史だよね?」
彼が不思議そうに尋ねる。
 「うん、魔法工学部からまわされて来て。回路の図面の調整してくれって」
 「いや、それ魔法研究学の仕事だろ。魔法史って魔法の歴史専門だろっ。関係ないんじゃ」
 「あっちはあっちで忙しいからねぇ…それに丁度回路について調べてたから丁度良かったし」
確かに、私は魔法の歴史について調べていて、魔法による伝達回路について調べていた。
 それを見ていた魔法工学の連中が私に頼んできたのだ。
なんでも魔法研究学部は、主力軸となる人物がベルゼーフ教授のお供で付いて行ってしまった為に、軸となるリーダー不在で壊滅的な事態と陥っている。主に個人個人の研究に押されて、アカデミー全体の研究物にまで手が回らないそうだ。
 そこで魔法工学部は、魔法の伝達回路に詳しい人物を探していた所、私を見つけて頼んできた…という事態である。

…という事を彼に伝えてあげた。

 「あいつら良く文学系の奴らに頼む気になったな…」
彼は静かにそう言う。
 「…それどういう意味?」
 「いや、別に。悪い意味じゃないよ」
さて…そろそろ。と彼は続ける。
 「戻るとする…かな」
彼はぐぅと背伸びをすると、そんな事を言う。
 「え、もう?」
私は驚くような声で言う。
 「いや、結構話したし。案外ケラスィア元気そうで良かった」
彼は笑顔を見せて言う。
 「俺も明日から遺跡行ってきた報告書書かなきゃいけないから…そろっと帰って寝るわ」
そう言うと、彼は後ろを振りかえって外へ通じる扉へ向かう。
 このままでは帰ってしまう。また、あの事について言えないまま…。

私は、どうしても彼に言いたい言葉がある。

 この言葉を口にしたら、どうなるか分からない。
 もう、こんな静かな時間は来ないかもしれない。
 心が震え、飛び出しそうだ。泣きたい位。
…それでも私は言いたい。言いたいの。

 「…待って…話があるの」
静かに、それでも聞こえるように言葉を出す。
「え“…?」
彼はギクリとした様子を見てこちらを振り返る。

 彼と、目が、合った。

 いつも、見てるのに、とても綺麗。

私は大きく息を吸って、そして言葉と共に吐き出す。

 「貴方の、事が、好きです!」

言ってしまった。言ってはいけないかもしれない言葉を、言ってしまった。


 「………それって…告白……だよね…?」
しばらくの間があったけど、彼はそう答えてくれた。
 「…うん…」
私はこくりと頷く。
 「…付き…合って欲しい…と?」
彼はまた言葉をつなぐ。
 「…うん…」
私は全力でこくりと頷く。

「…えーあー…これは…あー…うん…あれか…告白…なのか…俺が…やられた…」
彼はそんな単語をあさっての方向を首を回しつつぶつぶつと呟く。
 やっぱり、私がクォーターだから駄目だろうか?
 もし彼が、そんな事を、言ったら、私、私、私…

 「ちょっと…待ってくれないか?」
私が最悪の結末を予想していた時、彼はそう言った。
 「…いや、あの、なんだ…そういう意味じゃなくてだな…」
彼は顔を真っ赤にさせて今言った言葉を否定する。
 「…やっぱ…うん、分かった」
みたび何かを考えていたのか、考えるしぐさを取ってはいたが、何かを決めたようだ。
 「付き合うよ」

確かにそう言ってくれた。

彼が。私が大好きな彼が。

 「あっ、ありがとう…!」
もう、私は泣きそうだ。どうなるかと思った。本当に死ぬかと思った。

 「ちょっ、おま、泣くな!なんで泣いてるんだ!」
どうやら本当に泣いちゃったみたい。机に伏せておもいっきり泣きたい。
 「えーい、泣くな!泣くなー」
彼はそんな私を見て机に駆け寄ると、私を起こしてくれた。

「…」
「…」
目と目が合う。

 さっきも見たけど、やっぱり彼の目は綺麗だ。

 「…俺なんかで、いいのか?」
二人で見詰め合ってしんみりとしている時、彼が言う。
「こっちこそ…私でいいの?」
予想もしてなかった彼の言葉に、私は思わず、そう言ってしまう」

「うん、いい」
即答してくれた。
「いや、だって、俺、馬鹿だし。気が弱いし自己中心的だし。根暗だし。いいトコないぞ」
「そんな悪く言わないで!」
彼の予想もしてない自分を貶める言葉に、私は思わず大きな声で否定した。
「なんで自分をそうやって悪く言うの!貴方は…!マイオスは…!

…カッコいいんだよ」
思わず私は大きな声で反論するが、途中で自分が何を言っているのかを思い出して声が小さくなってしまう。

「あ…ありがとう…。カッコいいだなんて…」
再び彼の顔が赤くなる。
「ふふっ…顔が赤いよ、マイオス」
「うっ。る、るさい!」
 顔が赤い事をいうと、照れるように言う。
「るさいって何よ、るさいって…」
「し、知るか。えーじゃあ、一旦外出て、なんか食べに行くか?」
「え?」
思わぬ彼の提案に、少し戸惑う。
「いや、だから…ケラスィア。もうすぐ夕方で晩飯だしさ…。二人でなんかさ…」
 「…そうだね。じゃあ、行こうか。『なんか』食べに」
私は静かに笑みを浮かべて、彼の言うとおりにアカデミーを出て、近くの食事処へ赴く。

昼間は一人だったけれど、今は二人。
 それも私の大好きな人と一緒。
 
 道中、道の脇に植えられているケラスィアの木の花が満開だった。

 「そういや…もう春なんだな」
彼は、ケラスィアのピンクの花びらを見てそう呟く。
 「…そうだね」
私は静かに頷く。手はしっかりと彼の手を握っている。

 春の夕日の中、二人は歩いて行った。


おしまい。
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テーマ : ショート・ストーリー
ジャンル : 小説・文学

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タイトル
2011年2月16日導入
プロフィール

テト式

Author:テト式
24歳。がくせ…介護職員です。
東方厨だと思ったら艦これに裏切ったけど小鈴ちゃんが可愛いから那珂ちゃんのアイドルやめます。
艦これはやってません(迫真

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